青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

10代に新書で読む太平洋戦争

 第二次世界大戦の中でも特に、日本が中心となった戦局を「太平洋戦争」といいます。これは、戦後に付けられた名称です。戦時中の日本では「大東亜戦争」と呼んでいました。「太平洋戦争」とはいったいどのような戦争だったのか、中学生・高校生にも読みやすくて、わかりやすい、おすすめの新書を紹介します。

 

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澤井美穂『赤いペン』

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何か、物語はあるかい?

自分の物語を書かずにいられなくなるという、不思議な赤いペンのうわさ。

人から人へと旅をしながら物語を紡ぐ、そのペンの謎を追う。

赤いペンの不思議な物語

 それは都市伝説のようなもの。

その赤いペンを拾うと、手にペンがはりついて離れなくなり、無理やり書かせるという。ペンが勝手に何かを書き始め、疲れ果てた持ち主は病気になってしまうとか、ペンには呪いがあって手にした人は狂ってしまうとか。そのペンが赤いのは、持ち主の血を吸うからだとか。

去年あたりから町のあちこちで、そんな赤いペンのうわさがささやかれている。

 

夏野は、その赤いペンの話を探している。学校でも赤いペンのうわさを耳にすることはあるが、人と話すことが苦手な夏野は、直接話しかけることが出来なくて、調査は思うように進まない。

中学二年生にもなってクラスメイトに気軽に声をかけることもできない自分が情けなくもあり、自分のコミュニケーション能力の限界にへこんでいる。

 

そんな夏野にも心強い助っ人がいる。町の文学館にいるふたり、少し弱気だけどまじめで優しい草刈さんと押しの強いやり手のちはやさん。それから、バーすずらんのマスター、五朗さん(見た目はすらりとした美人さんだけどね)。

 

ひょんなことがきっかけで、クラスメイトの春山が調査に協力してくれることになった。春山は、好奇心が旺盛で、物怖じしないタイプ。ひょろりと背の高い夏野と、クラスの男子で一番背の低い春山。性格も正反対のふたりが、赤いペンを拾った人たちから物語を聞き集めていくのだが、やがてペンの物語は別の物語へとつながっていく。

 

どうして、夏野が赤いペンのうわさを調べようとしているのか。夏野には、赤いペンの真相を確かめたい理由があった。

少し謎めいていてファンタジックな物語。

 

 

わたしの感想メモ

 少し謎めいた物語に引き寄せられページをめくる手が止まらず一気読み。読みやすく確かな文章の安定感があり、ドキドキしながらもじっくりと読ませてくれる。赤いペンのエピソードを集めた連作短編のような流れを想像していたところで、夏野の物語が絡みはじめたところからさらにひきこまれ、最後をしっかりとまとめてあって、さらに余韻を残してくれる。最後まで飽きずに読めるかどうかは、私のおすすめ本選びのポイントのひとつだが、満点。

 

中学生の女の子にすすめたら、おもしろかったみたいで一気読み。村山早紀さんの『コンビニたそがれ堂』シリーズやあまんきみこさんの『車の色は空の色』が好きな人におすすめ。

 

高学年から楽しめそう。男女、年齢問わず、おすすめできるとてもいい作品。久しぶりにヒットの児童文学。著者のデビュー作だというので、今後の活躍にも期待しています。

 

 

おすすめポイント

 ◇高学年からおすすめ

◇中学生にもおすすめの児童書

◇著者のデビュー作

 澤井美穂さんは、北海道生まれ。高校の国語教諭をしながら、児童文学の創作に励んでいます。 

◇読書感想文にも

 

受賞歴など

 

◇第16回ちゅうでん児童文学賞受賞

◇全国学図書館協議会選定図書

 

本をチェックする

 

赤いペン (文学の森)

赤いペン (文学の森)

 

 

合わせて読みたいおすすめの本 

村山早紀 『コンビニたそがれ堂』

村山早紀『コンビニたそがれ堂―奇跡の招待状』

西川紀子 『わたしのしゅうぜん横町』

斉藤洋『遠く不思議な夏』

 

中学生・高校生が読みたい戦争小説

 第二次世界大戦終戦から70年が過ぎました。

戦争を直接語ることのできる方が少なくなっていくからこそ、忘れずに知っていくこと、伝えていかなければならないことがあると思います。

今回は「第二次世界大戦」をテーマにした、中学生・高校生にぜひ読んでほしい戦争小説を厳選しました。

※原爆をテーマにした小説、戦争ノンフィクション はページを分にしてまとめて紹介したいと思います。随時更新していきます。

 

 

 野坂昭如火垂るの墓』 

 著者の原体験から生まれた戦争孤児の兄妹の悲しい運命を描いた物語。ジブリ作品で知っているという人も多いと思いますが、ぜひ原作も手に取ってみてください。「アメリカひじき」とともに直木賞受賞作です。

 

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

 

 

 

百田直樹『永遠のゼロ』

 

 特攻隊として亡くなった祖父・宮部久蔵の生きざまをたどりながら、第二次世界大戦という戦争の軌跡をふりかえる。なにか戦争小説を読みたいという人に、まずこちらをおすすめします。

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

 

 

 

藤岡陽子『晴れたらいいね』

 

看護師の紗穂は大きな地震で気を失い、目が覚めると1944年のマニラで従軍看護婦・雪野サエになっていた!戦争を知らない世代の戦争体験に、引き込まれます。文庫化を心待ちにしていた作品なので、うれしい。映画化希望のおすすめ作品。

  

晴れたらいいね (光文社文庫)

晴れたらいいね (光文社文庫)

 

 

 

 竹山道雄ビルマの竪琴

 

児童文学として描かれ、映画化もされた名作。心を打つ力強さと不思議なあたたかさを持つ作品です。

 

ビルマの竪琴 (新潮文庫)

ビルマの竪琴 (新潮文庫)

 

 

 

 横山秀夫出口のない海

  第二次世界大戦中、特攻隊と同じように二度と戻れない極秘兵器だった人間魚雷「回天」への搭乗を志願した青年を描く。

 

出口のない海 (講談社文庫)

出口のない海 (講談社文庫)

 

 

 

 

水野宗徳『さよなら、アルマ』

 

 実在する1枚の写真から生まれた物語。それは、アルマと名付けられた一頭の軍犬の出征写真でした。第二次世界大戦中に、戦争に兵士として送られた犬と飼い主のあたたかく悲しい物語。

 

book-aoringo.hatenablog.com

 

 

 

灰谷健次郎『太陽の子』

 

ほんわかとあたたかい家族のような「おきなわ亭」に集う人々。そのあたたかさや優しさの奥には、深い悲しみがあった。はじめてこの本を読んだ時、私は二十歳を過ぎていたけれど、自分がこの戦争のことを本当は何も知らないことを知らされた。児童書として書かれた作品なので、小学生から大人まですべての人におすすめです。

 

book-aoringo.hatenablog.com

 

 

 

 大岡昇平『野火』

 

飢えという 極限状態に置かれた人間模様を描く物語。体も心も極限状態に追い詰める「戦争」の残酷さ。

 

野火 (新潮文庫)

野火 (新潮文庫)

 

 

戦争という非日常による精神の極限状態は、人間の倫理観を麻痺させる。遠藤周作の『

海と毒薬 (新潮文庫)』では、戦争末期に行われたとされる米軍捕虜の生体解剖事件を描いています。どちらも衝撃的で重いテーマなので、読後はひきずるかもしれませんけど。高校生からどうぞ。

 

 

 

 

ほかにブログで紹介している戦争小説

 

 

岡田依世子『霧の流れる川』