青りんごの本棚

中学生・高校生におすすめの本をあつめています

ハリエット・アン・ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』

f:id:book-aoringo:20170823115310j:image

 

どんなペンの力をもってしても、奴隷制によって作り出され、すべてを覆いつくす堕落を十分に表現することはできない。(本文より)

 かつて奴隷だった少女がつづる真実の物語

 

不埒な医師・フリント医師の奴隷だったリンダ。
雇い主からの耐え難い虐待から逃れるため、十五歳の少女が選んだのは、他の白人男性の子どもを産むことだった。
それは高潔な道徳心に背く、大きな賭けでもあった。
彼女が欲しかったのは、ただ自由で平穏なごく当たり前の生活。

 

奴隷制度の真実を知らなかった北部の人たちは、そのあまりにもショッキングでセンセーショナルな内容に、この物語を「著者不明のフィクション」と位置付けた。
実際に、リンダが北部に逃げ切った時、彼女が自由を手に入れるために計画し実行したことを告白すると、牧師はこうたしなめた。
「ほかの人にあけすけに話してはなりません。心ない人が聞いたなら、あなたを軽蔑する口実にするかもしれない」
しかし、だれも頼るもののいない場所で、恐怖に打ち震えるたった15歳の少女がほかにどんな方法で「自分」を守ることができただろうか。

 


自由を手に入れたリンダは、奴隷制の真実を人々に知ってもらおうと物語をつづる。奴隷の多くは文字を書くことができない。ましてや、物語が書けるとは思われていなかった。この物語も、白人の作品だと思われた。

126年後、歴史学者によってこの物語が「リンダ・ブレントによるノンフィクション」であることが証明されると、やがてこの作品は米国でベストセラーとなった。

 

奴隷制は白人さえも苦しめる

 

多くの黒人の自由と人格を奪った奴隷制度だが、物語の主人公リンダは、奴隷制の苦しみは黒人だけのものではない、と綴る。

 

奴隷制は黒人だけでなく、白人にとっても災いなのだ。それは、白人の父親を残酷で好色にし、その息子を乱暴でみだらにし、それは娘を汚染し、妻をみじめにする。黒人に関しては、彼らの極度の苦しみ、人格破壊の深さを表現するには、わたしのペンの力は弱すぎる。

 

この物語を読めば、白人の家族もまた奴隷制度によって翻弄されていることがわかる。


ひとりの奴隷少女が手に入れた自由はやがて、奴隷制度の残忍さの真実を伝え、長い間封じ込められていた多くの奴隷たちの声を解き放つ。

 

実話を基にしたノンフィクションノベル

 

*おすすめポイント*

◇著者自身の体験から生まれたノンフィクションノベル

◇奴隷制度を知る本

◇人権について考える本

◇中学生からおすすめ

◇読書感想文にも

読みやすい作品で、一気読みでした。

 

*本をチェックする* 

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)

  • 作者: ハリエット・アンジェイコブズ,Harriet Ann Jacobs,堀越ゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
  • この商品を含むブログを見る
 

 

人権について考える本

 

とどまることなく 奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース

サラの旅路―ヴィクトリア時代を生きたアフリカの王女

ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち

イクバルと仲間たち―児童労働にたちむかった人々