青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖(6)~栞子さんと巡るさだめ~』

奥手のふたりの恋はなかなか進展せず、古書をめぐるミステリーばかりがどんどんと解決してゆくさまに少々やきもきさせられた人も多いことでしょう。実はこのふたり、付き合い始めたんですよ。おほほ。

せっかくの定休日、古書をめぐる謎解きに奔走するふたりがメモでやりとりをするこんなシーンがある。

『本当は ふたりで、 どこか いきたかったです』 と栞子さん。
『俺も同じこと考えてた』と五浦さん。

くぅ~。五浦さん、古書の謎解きもいいけれど、たまには栞子さんを外にデートに誘いなさい。

 

 

太宰をめぐる因縁のあの男が再び登場


太宰の『晩年』、アンカット版をめぐるあの事件を引き起こしたあの男が再び二人の前に現れ、別の『晩年』を探してほしいという依頼を持ち込む。それは、署名がなくとも太宰本人によるものだとわかる書き込みをしてある、幻ともいえる特別な1冊だというのだが・・・。

途中から読んでもそこそこ楽しめるシリーズですが、こればかりはぜひ前巻までを読んでいるほうが楽しめます。
この手のシリーズものってだんだん単調になっちゃって飽きてくるものも多いのですが(←こら~)、ビブリアは本好きが食いつく題材をうまく取り込んでいて、新しいシリーズが出るごとにまた読んでみようと思わされます。お気に入りの作家さんや作品が取り上げられていたら読みたくなっちゃうしね。三上さん上手だなぁ。

奥手のふたりの恋がの進展がゆる~いところも、続けて読みたくなる要因のひとつになっているのかも。


1冊まるごと太宰


今回はまるごと1冊、太宰にまつわる古書をめぐる謎解きとなっています。
登場するのは次の作品です。ビブリアを読む前に、チェックしてみるのもいいかもね。

走れメロス (新潮文庫)

駈込み訴え

晩年 (新潮文庫)

太宰の経歴なんかも知っているとより楽しめますよ。もちろん詳しくなくても、これを1冊読見終え頃には、ちょっとした太宰通になっていること間違いなし。たっぷりと太宰の世界、そして古書コレクターたちのディープな世界を堪能できますよ。

読書好きと古書好きはちがう!?



読書好きの本読みさんな私だが、古書コレクションの世界はまったく別の未知の世界だと改めて知る、こんなセリフがある。とある古書店主の男を回顧するシーン。

「一尾の高価な・・・・・・本当に貴重な古書には、異様なほどの執着を示していた・・・・・・ほとんど読書をしない男だったから、それが価値の基準だったのかもしれん」

えぇ~!? 貴重で高価な古書を扱う古書店の店主なのに、読書をほとんどしないの?ちょっとびっくり。
彼らにとって魅力があるのは、1冊1冊の本のうしろにある背景なのだろう。それは、本のなかの文字に込められている世界とは全く別物らしい。

なるほど、言われてみれば私だってそうだ。ガチャポンだとかルパンだとかうさぎだとか、あれもこれもとコレクションしたがる私だが、本のコレクションにはさほど興味がない。何度でも読みたい自分特別だけをいくつか手元に残すというのが、わたしの本棚の
ルールで、それを決定づけるのは描かれた物語だけだ。だれかが掘り出した珍しい誤植よりも、ただしく印刷されているもののほうがいいし、ましてや閉じこみのアンカットなどただの本棚の場所取りになるじゃないか、とすら思う。

古書コレクターは、絵画を愛でるように本そのものを鑑賞するために手元に置きたがるらしい。読まれるために生まれた本を厳重に保管し、繊細にながめ、うっとりする。著者がその物語に綴った思い以上に、その1冊だけが持つ何かが彼らの心をつかむらしい。

いつか私の手元にあるこの1冊が消え失せても、書店にいけばいつでも同じ物語が私のものになる。
印刷技術が発達し、たくさんの同じ本が出来上がることに私は安堵すらしているのに。

同じ本好きでも、読書を好む人と本のコレクターとはその価値の違いが見えたところが、おもしろかった。

ビブリアシリーズを読む

三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖』

 三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖(5)~栞子さんと繋がりの時~』