青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

中沢けい『楽隊ウサギ』

「君、吹奏楽部に入らないか?」
「エ、スイソウガク!?」

  中学生の心の中には、いろんなものがすみつきやすい。望まずとも、あれこれと引きよせてしまうのも彼らの特性か。迷いや悩みは隙を作るのかもしれない。

克久はおっとりしていて思慮深い少年、よく言えば。逆を返せば、憶病ではっきりしない。学校では、ハブられたりもする。克久の中には、いつからか心の壁を塗り固めるのが上手な左官屋がすみついている。

そんな克久だから、できるだけ学校にいる時間を短くしたいと思っていたはずなのに、なぜか部活時間の一番長い吹奏楽部に入部してしまう。

意地の悪い男子からハブられる。
ハブは、ハブかれている→省かれている→省略されている、ということ。祥子ちゃんに言わせると、「シカトは無視。ハブは省略。意味は違う」のだそうだ。

そんな祥子ちゃんは、克久に言わせると、変わっていていじめられるタイプの女の子。あまり一緒にいたくないのだが、ふたりはパーカス担当。

克久の心の中には、気がつくといつか公園で見つけたうさぎが入りこんでいて、ちらちらと顔をのぞかせる。

何かを決断しなければならないことも、母親と口論になることもある。広い世界に放り出されたかのような無限のプレッシャーにたったひとりで押しつぶされそうになることもある。


最後の大会を終えた、有木部長のこんなセリフがある。


「負け惜しみと思われてもいいけど、もうこれから、絶対にこういう音は作れないと俺は思うんだ。うまい演奏とか深い演奏はこれからもできるけど、こんな真剣な音はきっとこれが最後だと」


ドラマティックでもなければ完ぺきでもない、彼らのいましかない躓きや葛藤は、淡々とした毎日の中でだれにでも訪れる。


おかあさん・・・
世間じゃそれを「伸びしろ」というんだぜ!!


ただただ進み、後ろを振り返ると階段が続いている。いつのかにか明るい場所に来ていたことに気づくはずなのだ。


先日、期末面談から帰るなり、言わないつもりのお小言がつい滑り出てしまった私自身へ自戒の念をこめつつ。

 

おすすめポイント

 

吹奏楽部の物語

◇男女どちらにもおすすめ

◇音楽が好きな人に

 

教科書でおすすめの本

 

・光村図書中学校国語教科書「読書案内」

 

映画原作

 2013年劇場公開

 映画「楽隊うさぎ」公式サイト→こちら

 

本をチェックする

楽隊のうさぎ (新潮文庫)

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