青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

吉永南央『萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ』

カッコイイおばあちゃんになりたいな、と思う。

そう、お草(そう)さんみたいな。

珈琲屋を営みながら、人の集まる場所でいろんな人の話を聞いて、少し頼られながら好きなことができたら、最高かもしれない。 

お草(そう)さんは、御歳76歳(数えですよ)。古民家風の造りの小蔵屋で、和食器とコーヒー豆を商っている。29歳で離婚して実家の家業を手伝ってきたが、父と母を立て続けに亡くし、思い切って雑貨屋家業を畳み、
小蔵屋に建て替えたのが65歳のとき。着物に割烹着、温和で小柄な可愛らしさを持つ一方、パソコンの家庭教師を雇いホームページ開設まで目論んでいる、なんともバイタリティあふれるおばあちゃん。

 

コーヒー1杯無料サービスの小蔵屋に集まってくるお客さんたちの会話から、小さな事件を見つけ出し、おせっかいよろしく、謎を解く。お草さんは、おばあちゃん探偵なのだ。

 

穏やかで聞き上手、昭和生まれのおばあちゃんが解決する謎に、児童虐待援助交際?といった現代社会の闇が絡んでいるというのも、面白い。
もう一つの読みどころは、「老いのリアル」。事件の手掛かりを探し歩き廻る姿を徘徊を疑われたり、脳梗塞から不自由となった体でひとり暮らしをしている友人・由紀乃さんの症状がすこしずつ後退していったりする様子が、大げさでなくじわりと重さを持って迫る。その老いを、そのままに受け止め、それでもただでは流されまいとするお草さんの姿が、いい。

 

「紅雲町のお草」「クワバラ、クワバラ」「0と1の間」「悪い男」「萩を揺らす雨」の5編収録。

 

中でも表題作の「萩を揺らす雨」にはノックアウトでした。私は、艶のある大人の恋の物語として読みました。76歳のおばあちゃん恋など…と侮ってはイカン!!思わず「あっ」と小さく漏れたラストは、なかなか。もっとじっくり読ませて欲しいなぁとも思いますが。

お草さんのように、可愛いらしいだけじゃない、芯と熱をもった女性に憧れる。

 

おすすめポイント

◇ほっこり系ライトミステリー

◇ドラマ化

 

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萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ

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