桜もちと『春、戻る』
『春戻る』瀬尾まいこ
ある日、さくらの前に突然、兄が現れた。
どう見ても、年下。
それに、もちろん、さくらに兄はいない。
じゃあ、さくらの結婚相手のことまで心配してくれちゃうこの兄は、いったいだれなの?
(本文より)今まで誰にも話さなかった出来事は、口にしてみると取るに足らないことに変わっていた。これくらいの挫折は、生きていくうえでごく自然に起こることだ。ふたを閉めて自分で重苦しい記憶に変えていただけで、その時々にすてきな出来事もあった。表に出せば、そのすべては懐かしい過去になっていく。