青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

住井すゑ 『橋のない川 2』

息子の最後の運動会に行ってきた。

 

私にとっても小学校最後の運動会でもあり、入場行進からしっかりとビデオを構えていると、開会式の中で「国旗・校旗掲揚、みなさま掲揚台をごらんください」のアナウンスがはいった。会場のみなさんが立ち上がり一斉にこちらを見た。
しまった!!
いいポジションだと思ったら、掲揚台のまん前だった。

真下から日の丸の国旗がのぼっていくのを見上げて、思い浮かんだのは、住井すゑ作『橋のない川2』で奉祝の儀に動員されたときの孝二である。

ほんの一瞬だが孝二は車の中の天皇の顔をはっきりと見た。


(P377)それは、何万の学童が刈田の水に足を濡らしながら佗立しようとも、いや、たとい降りしきる雪の中に雪にまみれて佗立しようとも、恐らく何の感慨も持たないであろう人形の表情だ。

 

それは、孝二たち差別を受けるものにとって、日本という国そのものに抱いている怒りや諦めであろう。
同じような思いで国旗の掲揚を見上げる必要のない私は、いくらか幸せなのにはちがいない。

 

橋のない川 (2) (新潮文庫)

橋のない川 (2) (新潮文庫)

 

 

差別部落に生まれ、いわれのない差別に悩みながら成長する少年の物語、2作目。

どこかのどかだった1作目と違い、2作目では高等科に進んだ孝二らの差別による痛みはさらに強く、不安や絶望感が大きくなっていく。

 

良識や分別がついてくる思春期だからこそ、おどけにみせかけての嘲りは、正面切って差別を口にするよりも、受ける側の傷はなお深くなる。孝二にとって希望ともいえる、まちえとの関係にもまた痛みが伴う。

 

故なき差別は現代にも存在する。
差別を受ける側にとっても故がなければ、実は、差別する側にとっても同じである、とすゑは描く。

 


(P352)差別がどういう意味からも至当でないのは誰しも承知している。それでいて差別せずにはいられない不思議な心情のうねり。こわいというのも、つまりは、差別の不当を敢てしている、そのはねかえりが思われるからなのだ。

 

大人に近づくほどに,差別のどろぬまに足をとられてしまうような逃れられない不安や絶望感が苦しい。

 

 

 橋のない川シリーズ

 

住井すゑ『橋のない川1』 - 青りんごの本棚

住井すゑ 『橋のない川 2』 - 青りんごの本棚

住井すゑ『橋のない川3』 - 青りんごの本棚