青りんごの本棚

中学生・高校生におすすめの本をあつめています

川端康成 『伊豆の踊子』

伊豆の踊子』が発表された1926年は、大正15年であり、昭和元年にあたる年。新しい年号の始まりの年でした。


ノーベル文学賞受賞者でもある川端康成の代表作は『雪国』ですが、10代には少し大人っぽいので、こちらの『伊豆の踊子」がおすすめ。特に、荒木飛呂彦の描いた大胆な表紙の集英社文庫は手に取りやすいのでは。

 

伊豆の踊子 (集英社文庫)

伊豆の踊子 (集英社文庫)

 

 

伊豆の踊子』をはじめて読んだのは20代前半、書き出しの文章に心を打たれた。その時、私の中に浮かんだのは、茂る緑と雨の白が霞むコントラストの情景と少し陰湿な空気感。時代劇で見るような古き良き自然の情景を単純に「綺麗だな」と思い、書き出しの文章も何度も読み返した記憶があります。改めて読んでみると…

 

道がつづら折になって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。

 

あれ、こんなに短い一文だったっけ?と少々拍子抜け。緑の景色や暗く湿った感じはそうだと描かれていないのに、勝手に浮かび上がったよう。無駄のない短い文章でも、それほどの美しさの印象を与える文章力があるということでしょうか。

 

BOOKデータベースによると…

伊豆の旅に出た一高生のわたしは、天城峠の茶屋で旅まわりの踊り子に会い、下田まで道連れになるが、2人の心に淡い恋が芽生え…。青春の哀歓を美しくえがいた名作。

 

自分のことを「孤児根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に堪え切れない」で旅をしている主人公に、自分を重ねる部分もある10代も多いのではないでしょうか。あなたにも清々しい出会いが訪れますように。