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青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

藤田孝典『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』

下流老人一億総老後崩壊の衝撃

 

普通の生活を送ることができない、〝下流”な生活を強いられている高齢者が増えているという。いま、十分な貯蓄がある(と言える)あなたには無縁な話だろうか。いや、これはすべての人に起こりうる、ごく近い未来の話である。

 

 

もくじ

 

  1. 下流老人とは何か
  2. 下流老人の実態
  3. 誰もがなり得る下流老人
  4. 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
  5. 制度疲労と無策が生むかりゅ老人
  6. 自分でできる自己防衛策
  7. 一億総老後崩壊を防ぐために

 

下流老人の実態

 

 

いま、日本には貧困があふれている(らしい)。ワーキング・プア、チャイルド・プア、シングルマザーの貧困、そして高齢者の貧困。

(らしい)と言ってしまうのは、自分の周りを見回した時に当てはまる人が浮かばないからだ。(たぶん)みんな毎日三食ご飯を食べて、(たぶん)きれいな服を着て、日々に小さな不満はあっても、(たぶん)普通に生活を送っている(ように見える)。

しかし、その実態はまわりからはほとんどわからない。

 

下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」を表す造語で、2015年の新語・流行語大賞にもノミネートされた。

 

埼玉県を中心に生活困窮者支援を行っているNPO法人を運営している藤田さんのもとを訪れる高齢者たちの相談は深刻だ。

 

インスタントラーメンなどの粗末な食事しかできない人。中には野草で飢えをしのいでいる人や三食をまともに食べられない人。病気でも医療費が払えず苦しんでいる人。節約のためにもらった薬を半分にして服用している人もいる。家族や友人もいない孤独な中で、明日の食事を心配して不安な毎日を過ごす。彼らの多くは、誰にも看取られず、後日遺体となって発見される可能性が高い。人間らしい人生の最期も与えられない。

 

そうした生活を送るのは彼らに落ち度があったからだろう、それは個人の問題でしょ、という人がいる。果たしてそうなのかな。

 

正社員として安定した収入と貯蓄があり、堅実な老後を送るはずが、3000万円の貯蓄が数年で底をつき困窮している男性もいる。家族もマイホームも手に入れ順風満帆の人生だったはずなのに、子どもの問題で生活が困窮するまで追い詰められている人がいる。

 

いま、見えはじめてきた下流老人の実態。

多くの高齢者は困窮の中にありながらも、助けを求める声をあげることができないでいる。把握できているものも、氷山の一角ではないだろうか。そして、これは誰にでも起こりうることと言える。

 

 

 人並みの生活には月収50万円が必要

 

 

先日、朝日新聞にこんな記事が出た。

 

埼玉で人並みの生活、月収50万円必要 県労連が調査:朝日新聞デジタル

 

このニュースを見て、すぐに浮かんだのがこの下流老人の本だった。

労働組合連合会(埼労連)の調査によると、埼玉県内で人並みに暮らすには月約50万円の収入が必要だという。妻はパート勤務、車はもたない設定である。それだけあっても、さらに子供を大学に入れるには奨学金がないと成り立たないのだという。

 

人並みの生活を送るには年収約600万円が必要だということになるが、実際には埼玉県内の30代男性の平均年収は約411万円と、だいぶ差がある。それならば、多くの人は人並みの生活を送ることができていないということになって、だったら「人並み」って一体なに?ということになって、それは「人並み」ではなくて「理想」の生活ってことなのか。

 

ここ数年の現実問題として、生活に必要な物価は値上がり傾向にあるのに対し、収入の増加はないに等しい。理想はどんどん高くなっていくのに、何もしなくても現実の生活は厳しくなっていくのだとしたら、老後のためにいまできることなんてものすごく限られてしまう。

 

実際の生活にもそれだけ必要だということになれば、理想とする十分な老後のための貯蓄額に実際の貯蓄が到底追い付かない、でしょうね。

資料を集めるほど、老後への不安しかなくなって、寝るのも怖くなっちゃうね。

 

 

人間らしい余生を送るために

 

長年、日本のためにと頑張って支えて来た人たちが、例えば生活保護を受けることで肩身の狭い思いをし、困窮した中で人間らしい余生や最期を迎えられないのだとしたら、あまりにもしのびない。

 

こうした下流老人たちの実態を知ってもなお、自業自得の自己責任だと言い切れるのだとしたら、私が余生を送るころには、姥捨て山が復活しているかもしれないと不安になる。

捨てられてメソメソするような私じゃないから、『デンデラ』のように婆たちの国を作って、村に復讐してやるだろうけれど←こういう危険人物は捨てずに味方につけましょう。

 

この本の中で、著者は下流老人にならないためにできることを提言しています。中でも、人とのつながりを豊かにしておくことが高齢者の貧困を救う大きな鍵になるという点に希望を見た。

 

おすすめポイント

 

◇社会を知る本

 

本をチェックする

 

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

 

 

続編の「続・下流老人 一億総疲弊社会の到来」も合わせて読みたいところ。

 

 

おすすめの本

 

チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困

さだまさし『アントキノイノチ』

鏑木連『エンドロール』

デンデラ (新潮文庫)