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青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

吉橋通夫『風の海峡』

歴史の教科書を開けば、日本と朝鮮半島には、それぞれそんな名前で呼ばれるよりも以前から交流があったことがわかる。 近くて遠い。 とても似ている海を隔てた隣の国。 この物語は、そのふたつの国の「歴史」と言われるひとつの物語。

 

青い海峡をはさんだふたつの国。
日本と朝鮮―。
背のびをすれば島影が見えるほど近い。
話す言葉は違うが、顔立ちはそっくり。
どちらの国も、米を主食にし、漢字を使い、
移り変わる四季をいつくしみながら暮らしてきた。梅の香りに春を感じ、
モモの甘さに夏を味わい、
紅葉と実りの秋に感謝し、
雪に閉ざされた冬を耐えぬく。

 

はるかな昔より、海峡の白い波頭を超えて
ふたつの国のあいだを船が往来し、人と物を運んだ。
移り変わる季節の中で、おたがいに信頼ときずなを深め、
移住した家族もいれば、恋を実らせた若者もいる。
ふたつの国をへだてたもの、
それは為政者がひきおこす戦争だった。

 

物語のすべては、この冒頭の文章に込められていますが↑
あらすじを紹介。

 

梯進吾は対馬に暮らす14歳の少年。日本と朝鮮の貿易で文書などを翻訳する訳官の仕事をしている父親と共に、よく朝鮮に渡っている。朝鮮人の李俊民(ジュンミン)・勢雅(セア)兄妹とも、本当の兄弟のように絆を深めてきた。ところが、時の天下人・太閤秀吉より朝鮮を征服の命が下り、日本は朝鮮に戦を仕掛けることになる。
それまで友好を築いてきた者たちが、したくもない戦に巻き込まれていく。日本と朝鮮、長年築き上げてきた絆は、もろく崩れさる―。

 

豊臣秀吉は、日本では人気の武将。百姓の出で太閤と呼ばれるまでに出世した秀吉に憧れたり、尊敬しているという人も多いはず。私も、「すごい人」というイメージを持っていたけれど、この本を読んで秀吉の印象ががらりと変わった。

秀吉の二度にわたる朝鮮出兵は、文禄・慶長の役として、日本史では必ず触れるが、教科書でほんの数行。たった一人の愚かな権力者のために、日本と朝鮮の何十万という命が失われた虚しさや憎しみの重さは、「朝鮮出兵失敗」などという数文字では、到底伝えきれない。

 

「ここ大事だからなぁ」という先生の「テストに出るぞ」アピールだけでは知ることのできない、ドラマや思いが感じとれる物語。

地名や人名など独特の読みや漢字も多いですが、文字も大き目で、歴史をわかりやすい文章で語ってくれているので、小学校高学年から読めます。進吾・俊民と同世代の中・高校生、韓流タレントが好きな人には特におすすめしたい。日本と韓国の歴史のひとつがわかりやすく描かれています。学校図書館にはぜひ入れて欲しい、今年の“押し”です。

 

希望を持って物語は終わりますが、みなさんも知っている通り、悲しい歴史はまた繰り返されてしまいます。同じ過ちを繰り返さないために必要なこと、そのヒントがこの物語の中に込められています。ぜひ、読みとってほしい。

 

おすすめポイント

 

◇歴史を知る本

◇児童書なので読みやすい

 

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風の海峡 上 波頭をこえて

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