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青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

中脇初枝『こんこんさま』

北鎌倉にある古びたその屋敷は、近所から「こんこんさま」と呼ばれている。広い敷地のどこかに神様が祀られているのだというが、家族のだれもそれを見たことがない。


深夜、駅のプラットホームで人身事故を目の当たりにしたはなは、ひとりのアパートに帰る気になれず、気づくと北鎌倉の実家へと向かっていた。家を取り仕切っていた祖母を失い、祖父と母と妹のさちが残る家。そこへ、家を出たはずのはなと父が偶然に戻り、思いがけない家族の再会となるのだが、この家族には、おかしな事情があった。
そこへ、さちが「占い師」だというおかしな男を呼び寄せて…。 

 

中脇初枝さんの描く家族は、いつもどこか少しちぐはぐしている。血縁というものを感意識させ、人が一緒にくらすということの意味を感じさせる。

一緒に暮らす人たちだけに流れる同じ空気。

その空気が淀まず流動していることの心地よさ。

好きな作家さんです。

 

どういう本が好きですか?と聞かれることがよくあるのだけど、返答にとても困る。それは、どんな人が好きかと聞かれるようなもので、例えば、時間に遅れる人は嫌いだが、「時間によく遅れるがいつも話のおもしろいYさん」のことは好きなので、必ずしも時間に遅れる人が嫌いとは言えないし、逆に、時間には正確でも苦手って人もいるし、などと考え込んでしまう。(こういう妙な真面目さが自分のアダだなと思うが) さばさばした人が好きだが、時折、攻撃的ともとれるほどの冷たさを見せる自分が嫌いでもあったりする。

私には、「この人は好き」「この人は嫌い」というピンポイントの答えしか出せないのだ。

 

 本に関してもそう。同じようなテーマ、同じ作者、同じような雰囲気の本でも、好き嫌いはそれぞれ。好きな本に出会うと、ただ、「この本が好き」とまっすぐに思う。

好きだからと言って、いい本かどうかはわからないし、決して人におすすめだというわけでもない。ただ、「好き」と思うのだ。

中脇初枝さんの『こんこんさま』はまさにそんな本で、読み終えて「この本好きだな」とわかる。

 

 おすすめポイント

◇家族をテーマにした本

◇文庫本の表紙は酒井駒子さん

 

こんこんさま (河出文庫)

こんこんさま (河出文庫)

 


 

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