青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

柳田国男『口語訳 遠野物語』

読みやすい「遠野物語」をお探しならば、こちらなどいかがでせうか。

 又吉直樹さんが、柳田邦男の『遠野物語』ゆかりの地や人物を訪ねながら遠野を紹介する『遠野一景』という番組を見た。座敷わらしと共に栄え、没落した山口家跡地(いまは何もない原っぱ)に行ってみたり。又吉さんのお気に入りキャラ・乙爺(おとじい)の子孫を訪ねたり。乙爺は、みんなに話を聞かせてやりたいんだけれど、風呂にも入らず臭いので、あまり人が寄ってこないというちょっと切ないキャラ。よく酒を飲んでは踊ったりする名物爺さん。番組に登場した、乙爺の子孫の方がちょっと恥ずかしそうだったりして。

ふつうの旅番組では紹介しないよなってところを訪ねてるのが面白くて、かなりツボ。

番組を見た後で、『遠野物語』にぐっと興味持っちゃったよね。

 

ところが、古典文学ほど昔の話でもないだろうというつもりで、原文を読もうとしたら、とても読めなかった。こんなこと言おうとしてるのね…と、さぐりさぐりではおもしろさが味わえない、としょげていたら、佐藤誠輔さん訳のこちらを見つけました。

これはとっても読みやすい。

 

口語訳 遠野物語 (河出文庫)

口語訳 遠野物語 (河出文庫)

 

 

 

遠野物語に記されている伝承の数々は、現在の妖怪などとよばれるものにつながる形で残されていたりして、よく知られているつもりでいたけれど、柳田国男が遠野の人々から聞いた物語に直接触れてみたいと思わされ、早速購入。

 

遠野の人たちが語る少し不思議な出来事を、柳田国男が素直に聞き集めてまとめられた記録集のようなもの。現代なら「科学的に証明できる」と一蹴されそうな、小さな不思議語りをそのままに受け止めて、まめに通い、聞き集める著者にだからこそ、遠野の人たちが多くを語ったのだろうと、想像させるような、まっすぐさを感じます。

そういう思いをもって読んでみると、なるほど、当時の人たちが見えていた世界にほんの少しでも触れるようなノスタルジックを感じます。

 

人から人へ言葉をつなぎ、時代を超えて語り継がれてきた、むかしばなしの源流はこういうところにあったのだなと、感じます。リツイートトラックバックで、だれかのつぶやきが簡単に拡散していく現代からも、こうした語りは生まれ継がれてゆくのだろうかとちょっと皮肉っぽくも、思えたり。