青りんごの本棚

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湊かなえ『告白』

湊かなえ告白

 

5/9は告白の日。

だれかに秘めた想いを伝える代わりに、私はこの本を読む。だれかに秘めた思いを伝えてみるのもいいかもね。

でも、こんな告白はごめんだわ。

 

*もくじ*

 

第1章 聖職者

第2章 殉職者

第3章 慈愛者

第4章 求道者

第5章 信奉者

第6章 伝道者

 

娘はこのクラスの生徒に殺されました

 

中学1年生の終業式。

こんな日まで牛乳を飲まされるのは、厚生労働省から乳製品促進運動のモデル校に選ばれてしまったからだ。

最後のミルクタイムが終わると、担任の女性教諭は告げた。

「私はこの今月いっぱいで教員を辞職します」

 

理由はみんなも知っている。

シングルマザーとして幼い娘をひとりで育てている女性教諭は、職員会議のある水曜日だけは、放課後に娘を学校に連れてきて保健室で待たせていた。その日、娘の愛美は学校のプールで死んでいた。プールに転落した事故死と判断されたが…

「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのです」

 

女性教諭は、愛する娘・愛美の死の真実をあばき、さらに犯人へ復讐を告白する。

 

教育とはなにか、罪とはなにかを説くように、淡々と娘の死とその真相を語る女性教諭は、母親というよりも感情をそぎ落としてしまったまるで告白マシーン。女性教諭の無感情に畳みかけられる語り口と、教室という閉鎖的な空間の中で少しずつ澱み重さを増してゆく不穏な空気に息苦しくなりながらも、ページをめくる手が止められない。

 

「決して愉快とは言えない話を長々と続けていますが、この先もっと不愉快な話になっていきますから」

 

ホームルームの時間はとっくに過ぎたから帰ってもいいと言われても、この一言が犯人にはプレッシャーを与え、他の子たち(この本を読んでいる私を含めて)は、好奇心をくすぐられてもう途中では降りられない。この物語を支配しているのは、この威圧感と好奇心だ。(それは、湊かなえのミステリーに共通する)

 

女性教諭の告白はありえないラストを告げるが、その衝撃に心を整える時間も与えられず、また次の人の告白が始まる。女性教諭の復讐は、次の犠牲者を生み、解決を求めるほどに悲劇を生んでゆく。読み手を変えながら止まらずに肥大してゆく悲劇は、ここまでくるともう喜劇!まるでシェイクスピア

 

やはり、どんな残忍な犯罪者に対しても、裁判は必要なのではないか、と思うのです。それは決して、犯罪者のためにではありません。裁判は、世の中の凡人を勘違いさせ、暴走させるのを食い止めるために必要だと思うのです。

 

感情を押し付けられる独白の息苦しさは、やがて、物語の結末を見届けなくてはという「もっともらしさ」にすり替わる。憎しみも愛も、好奇心も快感も、自分の中で処理しきれない感情は歪んだ正義感の後ろに上手に隠してしまえば、「社会」ではあらゆることが「アリ」になる。だからこそ、感情から切り離した「裁き」が必要なのだ。

 

しかし、理不尽に娘を奪われたとしたら私だって、法に頼らず制裁を加えたいと考えてしまうかもしれない。

たとえ、相手が中学生だとしても。

むしろ、法では裁けないのだから、自分でやるしかない。

そして、淡々と告げるのだ。

罪悪感を持たない自分の罪を。

ただ彼らを苦しめるためだけに。

全て壊れてしまえと、叫ぶ代わりに。

 

なんて、後味の悪い物語だろう。

 

嫌悪感に満ちたこのひねくれた小説に、衝撃と同じくらい小気味よさを感じる私もまた、物語の人物たちのように、すでに何かが麻痺していているのかもしれないけれど。

 

5/9は告白の日。

だれかに秘めた想いを伝えてみるのもいいかもね。あるいは、罪の告白を。くれぐれも大きな喜劇を巻き起こさないようにね。

 

 

おすすめポイント

 

湊かなえデビュー作

◇中学生のミステリー

◇文庫本では、映画監督の中島哲也氏のインタビューが掲載されています。

受賞歴ほか

 

・「聖職者」が小説推理新人賞受賞

・第6回本屋大賞受賞

・文春ミステリーベスト10で第1位

オリコン文庫本ランキングで歴代1位を獲得。(文庫本発売時)

話題の映画化

 

2010年6月劇場公開。

中島哲也監督。松たか子・主演。

 

その衝撃的な結末に(結末ばかりでもないが)映画化ではR-15指定となったことでも話題に。中島監督は、映画脚本を書きあげるために、何度も繰り返し原作を読み込み、主役の森口先生は相当の技量のある女優さんでないとできないと考え、松たか子さんに依頼したそう。直樹の母親役の木村佳乃さん、空気を読まない新人教師・ウェルテルに岡田将生さんなど、ほかのキャストもイメージにぴったり。森口の娘・愛美役に芦田愛菜ちゃんも出演していますよ。

 

本をチェックする

映画ファンには、監督のインタビューが掲載されている文庫本がおすすめです。

 

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

 

 

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