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青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

辻村深月『盲目的な恋と友情』

あの人が死んでしまったら、とても生きていけないと思った、あの幸せの絶頂ー。

恋をしている時、見えなくなるのは相手なのか、自分なのか。 

 盲目的な恋

 

蘭花は美しかった。

タカラジェンヌの娘。

大学の管弦楽団に入部した蘭花は、演奏会の指揮者としてやってきた茂実星近(ほしちか)と恋をした。

 

学生たちから一目置かれる茂実に自分が選ばれたことへの高揚感。やがて甘美な恋は、大きな綻びをみせてゆく。

転落していくとわかっていても、一度すべてをゆだねてしまった蘭花にとって茂実との恋は、特別でかけがえのない"決して手放せないもの"となってゆく。

 

親友の美波は蘭花の「そういうびっくりするくらい客観的なところが好き」だと言うがが、客観的に見てその恋はとても愚かしい。

 

 

盲目的な友情

 

蘭花は美しかった。

タカラジェンヌの娘。

留利絵にとって蘭花は、地味な自分の人生に与えられた光。

愚かしい恋に堕落していく蘭花に再び光を与えられるのは、自分しかいないと留利絵は奮闘する。

自分に見向きもせず、恋人のことばかりの蘭花に留利絵の心はかき乱される。

 

蘭花も留利絵も、だれかに選ばれることで自分の存在価値を確かめようとしている。

みんなから一目置かれる存在である茂実に恋人として選ばれたということ。

誰の目にも美しく素敵な女性に映る蘭花の親友に選ばれたいということ。

選ばれたい思いと、自分が選んだものに間違いがないと信じきる盲目的視点。

どの物語の主人公もそうであるように、主役は観客には成り下がれない。

主役である自分が選ばれない人生など存在しないのだ。

自分の人生において、自分は特別でかけがえのない存在でなければならないのだから。

 

蘭花の視点から描く「恋」と留利絵ちゃんの目線で描かれる「友情」のふたつの章からなるミステリアスな物語。

 

どうしようもなく甘く堕ちていく彼女たちの物語と、ヒグチユウコさんの描く艶やかなイラストの組み合わせがしっくりくる。

 

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盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

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