青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

上野哲也 『ニライカナイの空で』

昭和の少年たちを描く小説っていいよね。
少年たちは、身軽で、単純で、熱くて、とにかくよく走っていて、日に焼けていて、爽やかで。

 単純といっても、決して問題を抱えていないわけじゃなくて、それぞれに生活のこと、父親のこと、未来のこと、いろんな不安を抱えている。それにずぶずぶと引き込まれるではなくて、それでも前に進んで成長していく姿が逞しくて、本来子供ってこういう強さを持ってるのだということを思い出させる。

ニライカナイの空で』もそんな作品のひとつ。

 

1963年、父が事業に失敗し新一は東京を追いだされ、福岡の炭坑の町へ。そこで、父のかつての戦友野上源一の元へ預けられることに。慣れない遠地での生活に寂しさや不安を抱えていた新一だが、源一郎の息子竹ちゃんや友だちとの交流を通して、逞しく成長していく姿を描く。

中学生にこういう本も読んでほしいなと思うけれど、なかなか自分では手に取らないだろうから、上手におすすめしていきたいな、と思わされる本。

 

おすすめポイント

 ◇昭和の少年たちの成長物語

◇炭鉱の町を描く

 

本をチェックする

 

ニライカナイの空で (講談社文庫)

ニライカナイの空で (講談社文庫)

 

 

情景について

情景という言葉がある。
心を映すかのような風景の描写がすんなりと入ってきて、必要以上に描写がしゃべりすぎない小説が好きだ。
こちらに読みとらせてくれる、余裕のある文章。こういう文章を持つ小説に出会うと、一方的に文字をなぞるような「読む」というより、小説そのものととっくみあってるような感覚になる。
トーリーがおもしろい本を一気読みしてしまうのとは逆に、こういう本は、文章を読み返したりして、じっくり味わいたくなる。
ただ、そういう景色や心情を感じた経験がなければ、いま言ったような、本と組み合って味わうことはできないだろうと思う。

体験ありきの読書。


大人は「たくさん本を読もう」なんて読書してれば知識や想像力がつくと思っているけれど、草むらの中を走り回って、汗かいて、土を握りしめての経験があってこそ、読書が生きてくるということも忘れないでおきたい。