青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

河原れん『ナインデイズ』

「たとえば、これがなにかの試合だったら、勝ち負けをつけることができたのだろうか。」

この一文からはじまる最初の4ページが、この小説のすべてを語っている。

川原れんナインデイズ


夢とも、現実ともつかない。
もうすべて投げ出して、ただ力なく笑うしかない。地に足が付いていないふわふわとしたような、あの数日間の感覚がよみがえって、涙をこらえるような思いだけが込み上げる―涙はなぜか出ない。

 

この本が、フィクションのエンターテエイメント小説だったらな、と読みながら何度も思う。ただ、「設定が面白い」「エキサイティングでした」という感想が言えたらどんなにかいいだろうかと。こうして活字で読み返してみて、それほどに現実味のないような、想像しえない事態が次々と畳みかけるように起こっていたのだと、改めて愕然とする。

 

みんなが必死だったように、県政もできるだけのことをしてくれていたのだと、頭の下がる思いです。県民のことを一番に考えてくれる、こんな県政のある県に暮らしていることを誇りに思うと共に、その情熱が必ず、県の復興を果たしてくれるはずと希望を持ちました。しかし、政府の対応の悪さ・遅さには腹が立った。

 

小説だとわかっていても秋冨慎司さん自身の著書かと錯覚するほど、穏やかさの中にも、現場の緊張感ややるせなさ、怒りが、直に伝わる文章だった。

 

震災の過酷な状況が甦る、映像化はして欲しくないと強く思う作品。

そういう意味でも、ぜひたくさんの人に手に取って読んでほしい1冊です。

 

(BOOKデータより)ひとりでも多く助けたい。
思いは、ただそれだけだった。
東日本大震災での岩手県災害対策本部の闘いを描く、感動のノンフィクションノベル。

2011年3月11日、東日本大震災発災直後、岩手県庁内に設置された災害対策本部。そこで、県の防災室の面々と共に指揮にあたったのは、岩手医大救命救急センターの医師、秋冨慎司だった。濁流に飲み込まれた被災地。襲いくる火災。錯綜する情報。足りない燃料。悪天候で飛べないヘリ。「被災地で苦しんでる人を、ひとりでも多く助けたい」その一念で、秋冨は寝食を忘れ奮闘する。焦りから声を荒らげ、動かない行政に低頭し、己の力不足に唇を噛み締め……。その激烈な9日間を、膨大で緻密な取材をもとに、リアルに描ききる。

 

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