青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

湯本香樹実『ポプラの秋』

ポプラ荘のおばあさんが亡くなった。
というところから、物語は始まる。

 

千秋が小学1年生になってすぐ、お父さんんが交通事故で死んだ。
その年の夏に、千秋は母とふたりでポプラ荘に引っ越してきた。

ポプラ荘の大家さんはおばあさんで、このおばあさんの顔、なんとポパイみたいで怖い!?

おばあさんのしわの深いおでこは、見事に丸くせり出し、広々としていた。歯は上がまったくなく、下の前歯が三本しかないせいか、下顎がしゃくれたように突き出している。極端なちんくしゃ顔は、ポパイに似ていないとは言えず、いやむしろそっくりだった。


そして、こう続く。

 

けれどおでこと顎の谷間の底で、じろりじろりと動くその目は、おばあさんの素性を、あやしい薬を飲んで悪者になってしまったポパイである、と私に物語っていたのだ。


ちなみに、映画ではおばあさん役は中村玉緒さんが演じた。

こんな風貌のおばあさんを最初は怖いと思っていた千秋だけれど、熱を出し学校を休みがちになった千秋をおばあさんが預かってくれたりしているうちに、ふたりの仲もぐんと縮まってくる。
ある日、千秋はおばあさんから秘密は話してもらう。

 

自分は手紙を届けるのだ、とおばあさんが言った時、私の頭の中を赤いスクーターに乗ったおばあさんが横切った。
「郵便屋さん?」
おばあさんは座椅子の上で背をまるめて、ふふふ、と笑った。
「あの世のさ」
「え」
「あの世の郵便屋。あたしがあっちへ行く時に、こっちから手紙を運ぼうってんだよ」
おばあさんは「ここんとこ雨が降らないから……」と言いながら、ちり紙で鼻のあたりをもそもそやっている。私はくずかごを引き寄せると、おばあさんの手元においた。かちかちに乾いた鼻くそをくるんだちり紙を、捨てさせられるのがいやだったのだ。
「あの世にいる誰かとね、たとい心底繋がってると思ってたって、違うものだよ、手紙を届けてもらえばね」


それからおばあさんは、従兄の孝介さんが死んだ後、手紙を書いた話を聞かせ、箪笥の一番上の抽斗しには、いろんな人から預かった「あの世行き」の手紙がつまっているのだと言った。その日から千秋も、お父さんに届けてもらうための手紙を書いたのだった。

タイトルに秋をうたっているだけあって(?)登場する食べ物たちも美味しそうなのです~。
ポプラの葉を集めた火で作る焼き芋、おばあさんのとっときの豆大福、おばあさんが毎日すすってるどろどろのカブの味噌汁は……?(血圧が上がりそうです)

めぐる季節の中、お父さんの死を乗り越えてゆく千秋とおばあさんのちょっとほっこりする、こたつの中で読みたくなる物語。

 

 おすすめポイント

◇おばあちゃんとの物語

◇映画原作

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映画『ポプラの秋』公式サイト

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