青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち

 この本におさめられているのは、写真家ルイス・ハインが世界に知ってほしいと願ったた「小さな労働者」たち

子どもの権利条約」を知っていますか?これは、子どもの基本的人権を認めるもので、1989年 に国連総会で採択されました。当然、大人は子どもの人権を守る義務があります。

残念ながら、21世紀の現在でも、世界のすべての国の大人が、この条約を守っているわけではありません。危険な労働を強いられるイクバルのような小さな子どもや、勉強する機会を奪われたマララのような少女、誘拐され兵士とされる少年たちなど、不当な扱いを受けている子どもたちは大勢いるようです。

 


今では、子どもたちへの強制労働は人権侵害にあたるという考え方が定着していますが、アメリカでも20世紀前半までは、子どもたちの強制労働は普通のこととしてありました。(日本にも、小さい子供を商家へ下働きに出す、丁稚奉公なんていうシステムもありましたが)

世界恐慌の際、職を失った大人が町にあふれる一方で、工場を動かしていたのは、多くの子どもたちだったという話もあります。大人よりも安い賃金で一生懸命に働く子どもたちは、多くの経営者にとってとても都合のいい労働力とみなされていたようです。多くの子どもたちが、学校へ行く時間を奪われて危険な仕事をさせられている状況を何とかしたいと考えていたルイス・ハインは、アメリカ中のこうした児童労働の現場へ出向き、子どもたちの写真を撮影して歩きました。『小さな労働者』は、写真家ルイス・ハインの生涯と彼が撮影した写真を集めたノンフィクションです。

 

この本の著者、ラッセル・フリードマンも印象的だと述べた一枚の写真があります。

重たい木製ドアの前のベンチに座る少年。彼は何をしているのでしょうか?

ここは、地下の炭坑の奥深く。この少年の仕事は、石炭車がやってくるのを待ち、石炭車が来たら木製のドアをすばやく開閉することです。なんだ楽ちんな仕事だなぁと思いましたか?ルイスは、この少年の仕事について、こう語ります。


これはまったく孤独な仕事です。日に九時間から10時間もの間、帽子についた小さな石油ランプの明かりがともるだけの完全な暗闇の中、ただ一人で過ごすのです。坑内のあまりの暗さに、乾板を現像してみるまで、ドアにチョークで書かれた落書きがあるのにも気づきませんでした。この落書きは、地下ですごす少年の孤独を雄弁に物語っているといえるでしょう。


彼の仕事を想像してみてください。暗闇の中、たったひとりで暗い炭坑に置いておかれる恐怖。しかし、孤独ではあるけれど、ブレーカー・ボーイのように窒息死したり、綿紡工場のように指を失う危険が低いだけ、いいのでしょうか。多くの労働の現場は、大人にとっても厳しいものだったようです。ガラス工場で長い間働いたある労働者は、こう語りました。

 


「自分の息子をガラス工場で働かせるくらいなら、直接、地獄に落としてやったほうがましだ」

 

 

炭坑の暗闇の中の孤独を怖いと感じるのは、自分が恵まれているからかもしれない、とも思えてきました。


ルイスの撮影した写真は、多くの人たちの目にとまり、児童労働に対する批判の声も大きくなっていきました。写真には世論を動かす大きな力があります。

 

本をチェックする

 

ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち

ちいさな労働者―写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち