青りんごの本棚

中学生・高校生におすすめの本をあつめています

ヨーコ・カワシマ・ワトキンス『竹林はるか遠く』

 1945年7月、第二次世界大戦終戦の直前。
朝鮮北部の町・羅南に暮らす11歳の少女が、大混乱の朝鮮半島を縦断し、祖国日本へと戻る過酷な旅が赤裸々に綴られている。

「愛と涙のサバイバルストーリー」などと本紹介されているが、二流SF映画の謳い文句のような安っぽいキャッチフレーズは添えないでもらいたい。

燃え落ちる貨物列車から飛び降り、
死んだ朝鮮兵から脱がせた軍服を身につけ、
躊躇わず頭を丸坊主にし、
ゴミ箱から残飯をかき集める。
痛みを感じる余裕さえない。

ひとときも休まることがない不安と恐怖の連続に、追い立てられるように、読み進める手が止まらない。

ほんの少しの安心できる場所を見つけたくて、ページをめくるが、一難去らないうちに次の難が襲いかかる。
その厳しさが、この物語が事実なのだという証拠なのだろう。

こんな土を噛むような思いをいくつも乗り越えてやっと帰国できるのだが、残念ながら、帰国が彼女たちの終戦にはならないのである…。

印象的なシーンがある。京都の駅で寝泊まりしていた擁子と好が、朝、井戸で服を洗おうと駅の外に出て、はじめて市電を見た時のことである。


電車はチンチンとベルを鳴らして、動き出した。降りた人は元気良く駅の中へ歩いて行った。彼らは素敵な服を着て私たちの目の前を通り過ぎた。
「仕事に行くんだろうね」
好が言った。彼らは私たちとは別世界の人だった。
駅の中には、私たちのような引揚者の他、こじき、負傷兵、すり、孤児、売春婦などがいて、ここで生活しているというのに、ほんの少ししか離れていないっところでは、帰る家のある人々がきちんとした身なりをして、平和そうに仕事に出かけていくのだ。(P143)



8月15日は終戦記念日ではあるが、決して、戦争が終わった日ではない。
戦争がもたらした体験もそれぞれなら、当然、戦争に対する認識もそれぞれ異なる。守られた中からでは見えづらいものをも、この本は語っているように思う。

アメリカでは、中学生の副読本としても採用されていたというのもわかる、読みやすさ。
10代に読んでほしいノンフィクション。

 

おすすめポイント

 

戦争と平和について考える本

◇アメリカで教科書に採用

◇続編もあります

続・竹林はるか遠く―兄と姉とヨーコの戦後物語

◇高校生以上には海外版も

So Far from the Bamboo Grove

 

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