青りんごの本棚

~本とごはんとコーヒーと。10代の読書案内~

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

 

 

 
ブッカー賞候補の静かなる近未来SF

このおしゃれな表紙から音楽がテーマかと想像させられましたが、そうではありませんよ。

◆あらすじ
自他共に認める優秀な介護人キャシーは、提供者の世話をする仕事をしている。ヘールシャムの施設で育ったキャシーは、時には、同じ施設出身者の介護人になることもある。親友だったルースとトミーの介護も経て、まもなく介護人の仕事を終えようとしているいま、ヘールシャムでの日々に思いをはせる…。


近未来を舞台にしたSFドラマです。キャシーが幼いころに育った寄宿舎での生活を回想しながら物語がはじまります。そこがどんな施設なのか、なぜ彼らはそこで生活をしているのか、読者はもちろん、登場する子どもたちも謎を抱えたまま物語は進みます。モノクロの表紙のように、近未来を描きながらも物語は静かに進みます。少しづつ謎を明かしながら彼女たちの運命を匂わせて、静かさの中に、彼女たちの心の揺れを描く。翻訳小説ですが、日本の純文学のような、穏やかさを感じさせる文章の美しさもあります。最後には、私たち自身の未来についても考えさせられるストーリー。

高校生から読みやすいと思います。


カズオ・イシグロさんは日本人作家?

 

カズオ・イシグロさんは、1954年長崎生まれ。5歳のとき海洋学者の父親(←海洋学者ってすっごく憧れる~)の仕事の関係でイギリスに渡りました。一時はミュージシャンを目指し、やがてソーシャルワーカーとして働きながら執筆活動をはじめます。デビュー作『遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)』が、王立文学協会賞を受賞。以降、ウィットブレッド賞ブッカー賞も受賞しているイギリスでは超ベストセラー作家です。
漢字では「石黒 一雄」。現在、国籍はイギリスで、日系イギリス人作家となります。こんなすごい日本人がいるなんて、全く知りませんでした。

 

おすすめポイント

◇2005年 ブッカー賞・最終候補

ディストピア小説
◇映画原作

◇ドラマ化

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)