青りんごの本棚

ごはんと本とコーヒーと

本棚

乙一『失はれる物語』~ないはずのものを存在させる言葉

古本屋さんで、お気に入りの本を見つけると手に取らずにはいられない。古い友人に出会った時のように、というよりも、朝出かけて行ったはずの家族にひょんなところで出会ってしまったような気持ちになるのだ。 「あっ!そこにいたんだね」と、本棚からゆっく…

【読書記録】2018年に読んだ本まとめ② 21~40冊目

わたしの読書記録メモ【2018年版② 21~40冊目】です。 1冊目から20冊目はこちらの記事にまとめています。 book-aoringo.hatenablog.com 読んだ本の記録を積み重ねていますので、古い記録が下になります。 28冊目 オンザライン オン・ザ・ライン posted with …

【読書記録】2018年に読んだ本まとめ①1~20冊目

わたしの読書記録メモ【2018年版】です。長くなるので分けてます。 1冊目から20冊目をまとめました。 20冊目 山田悠介『スイッチを押すとき』 スイッチを押すとき posted with ヨメレバ 山田悠介 角川書店 2008年10月 Amazon Kindle 楽天ブックス 中高生に絶…

吉本ばなな『すばらしい日々』、と。

やけに病院通いが続いた。 娘が胃腸炎になり、 息子が鼻水を垂らして発熱、 それからインフルエンザの予防接種も…。 スケジュールもストレスも積み上がってるうえに、 仕事を2日も休まなければならないことにも疲れのため息が出る。 病院の待ち時間つぶしに…

たとえ、女手ひとつで砂を掻きだせるのだとしても。~安部公房『砂の女』

ある日。 こうして毎日、のこのこと雪に降られてはたまらないわねぇ。 一日に何度、雪片付けをしなくちゃならないのか。 窓の外をながめては、いい加減嫌気がさして、ほぅとため息をつく。 しかし、それも仕方がないこと。 ここに生まれて、ここに住み付くも…

ロマンチックと狂気のあいだで揺れる~江國香織『神様のボート』

この本に出会ったのがもう10年も前になるなんて、時間の流れにも自分が変わってしまったことにも驚いてしまう。 「あの人のいない場所になじむわけにはいかない」と、娘を連れ、引越しを繰り返しながら、消えた男を信じて待ちつづける葉子。 移動しながら…

麒麟に呼ばれる~今村夏子『こちらあみ子』

ある日。 目があった瞬間に「読めばいい」と、その生き物は言った。 いやに挑戦的なその態度に私は ほう、とひとことつれなく返す。 あのね、私に甘い声をかけてくる本はあなただけじゃないのよ。 だって、ここは図書館でしょ。 本なら燃やしても余るほどあ…

マックにて、原民喜『夏の花・心願の国』

娘とマックカフェにて。 原民喜『夏の花・心願の国』 慌ただしかった数日。 いつもより少し遅くに目を覚まし、布団の中でごろごろとテレビをながめたり、娘とだらだらとおしゃべりしたり。 いつもより少しのんびりとしたいつもの夏の午前8時15分。 気がつく…

中田永一『吉祥寺の朝日奈くん』

おはようございます。 今朝のお弁当はおにぎりとサラダ。 写真を撮る余裕もなく、娘の送迎。 もうここへ来るのも最後かな、なんて話したのはつい先週のこと。 また来れてよかった。おかげさまで今日も朝から足湯に浸かっています。 .:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.…

夏休み『蛍川・泥の河』

今週のお題「リラックス」 朝活で外活。 美しく整備された芝生と小さな川のほとりにて。 2017-25冊目。 宮本輝『螢川・泥の河』 芥川賞とは、純文学の新人に贈られる賞。 純文学の定義はそもそも曖昧で、 受賞作には実験的な作品も多く、 同時に発表される直…

だれかと生きることの意味がわからない~『ひきこもりの弟だった』

もうすぐ6月も終わってしまうというのに、カメラロールに撮りだめされたままの読書記録用picたち。 読書ノートに日付を入れていないから、いつ読んだのかもう不明。 美味しそうなこちらのpicだって、果たしてなにパンだったのか全く思い出せない。 うっすら…

でもこんな『告白』はごめんだわ

5/9は告白の日。 秘めた想いを伝えてみるのもいいかもね。 でも、こんな告白はごめんだわ。 『告白』湊かなえ 告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1) posted with ヨメレバ 湊 かなえ 双葉社 2010-04-08 Amazon 楽天ブックス なんて、後味の悪い物語だろう。 …

老後に必要なお金と人とのつながり~『下流老人』藤田孝典

日々が目まぐるしい早さで通り過ぎる。 目の前のことで精一杯で、なんとか生活に振り落とされないようにしがみつくような毎日。 しかし、もしも。 こんなに頑張ってるのに、高齢者になった時に、安定した暮らしができないとしたら…。 『下流老人』藤田孝典 …

夢見るダンサー王子を待つ『バレエものがたり』

いつか誰かが作ったこの未知の生き物は、私におとぎばなしに出てくるダンサーを連想させる 。魔法で何者かに変えられてしまった彼女は、もちろん王子様があらわれるのを待っているのだが、なかなかあらわれないうちに、ダンスばかりが上達していく。・なぜ王…

『優しいおとな』好きすぎて再読。

2017-27冊目 『優しいおとな』桐野夏生 おとなは三種類だ。 優しいか、優しくないか、どっちつかずか。 優しいおとなは滅多にいない。 優しくないおとなからは、すぐ逃げろ。 でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。 ともかく、おとなを…

それは自分に共鳴する音楽に突然出会うことに似ている~長谷川夕『僕は君を殺せない』

長谷川夕『僕は君を殺せない』 2015年度ノベル大賞受賞作 君は、僕の、たくさんある嫌いなもののうちのひとつです。 それなのにどうして、そんな風に笑うのでしょうか。 君が笑うたび、僕は泣きたくなります。 『僕は君を殺せない』長谷川夕 気に入った本は…

わたしはもらったものでできている~角田光代『Presents』

『Presents』角田光代 人にしてやったことは忘れても、人にしてもらったことは忘れるなと、田中角栄は言った。 これは余談。 本作とは全く関係ありません。 しかし、全く、というわけではない。 読了後、私の頭の中に飛び込んできたのは、いつか目にした田中…

朝日中高生新聞と池上彰『学び続ける力』

池上彰さんは、元・NHKの記者。 2005年退職後、現在はフリージャーナリストとして活躍するかたわら、現在、東京工業大学でリベラルアーツセンターの教授として、学生に一般教養を教えています。 これまで、日本の大学では専門性に重点を置く教育が主流でした…

桜もちと『春、戻る』

『春戻る』瀬尾まいこ ある日、さくらの前に突然、兄が現れた。 どう見ても、年下。 それに、もちろん、さくらに兄はいない。 じゃあ、さくらの結婚相手のことまで心配してくれちゃうこの兄は、いったいだれなの? (本文より)今まで誰にも話さなかった出来…

アコギと江國香織とごぼーチップス~『やわらかなレタス』かも

目の前に、まだ片付いていない洗い物だとか、誰かのトレーナーだとか、書類だとかが散乱している。 2階からはまた、息子のギター。 やらなくちゃいけないことはたくさんあるらしいが、お茶でも飲んで本でも読まなきゃやってられない、休日の午後。 本棚から…

『あひる』今村夏子の描くズレてる感覚が好きすぎる

第155回芥川賞候補作 『あひる』今村夏子 デビュー作がえらく気に入って、楽しみに待っていた1冊。 ほんわかとしたあひるのイラストに淡いピンクの装丁。 しかし物語は、日常にいつの間にか入り込む、穏やかな狂気をはらむ。その「ずれ」に違和感を感じない…

『47都道府県女ひとりで行ってみよう』で母はバーチャルひとり旅に出る春休み

この春休み、私は旅をしている。 息子の受験から解放されて、古い仕事をやめて、面倒なことのすべてを放り投げて、新しい日々を待つこの心踊る季節をもっと有意義に過ごすのだ。 いつものように無意味にバタバタしたりなんかしないで。 誰にも気を使わずに……

『西の魔女が死んだ』心に残った一文

『西の魔女が死んだ』梨木香歩 自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロ…